« 映画「ロッキー・ザ・ファイナル」 | トップページ | ノックさんの貢献度 »

映画「あしたの私のつくり方」(少しネタバレ)

ネタバレと言っても、全部読んでいただいても、どんなふうに物語が展開するかは想像つかないとは思います。

いじめにあって転校していった同級生を励ますつもりで、メールで物語を送り続ける14才くらいの女の子の物語。

Ashita この作品の奇妙なところは、登場人物に個性が感じられないことです。逆に言うと、個性などあってはならない子どもたちの世界を描いたからこそ、個性など存在するべきでない、と言いたげな珍しい作品なのです。

だから、物語の進行はナレーションが中心とした心理描写が多いのですが、その場合、映画を見ている者はナレーションがうるさく感じがちになるのに、そうはならない、そこがこの作品の面白いところであり、衝撃的なところでした。

この作品に登場する女の子たちは、常に自分でない誰かになっている、または誰かに頼って生きています。そうしなければ、学校でいじめにあい、家族がうまくいかない。「私はかすがいになる」や「自分を隠す」など、映画の前半は子どもとは思えないセリフがいくつも出てくるので、見ている者は衝撃をおぼえるのです。

ところが主人公が、以前にいじめられていた同級生に自分を隠して物語のメールを打ち続けるあたりから、映画の物語もそのメールの物語同様の面白さに溢れてきます。このあたりのストーリーテリングのうまさは、さすがに監督市川準ならではと唸らされました。繊細に少女たちの行動、そして表情をさりげなくとらえていくカメラの動きが本当に素晴らしい。

後半、物語のメールを送る側、受け取る側のお互いの少女が他人を演じるのではなく、自分でありつづけたいと思うようになります。しかし、スクリーンの外側から見ている、私たち大人たちはそうしようとする女の子たちに不安をおぼえてきます。それは、大人になるにつれて、自分とは何かに迷うことを我々は知っているから。

監督はあからさまに、そんなメッセージを演出の中に残しません。しかし、観客はそれをゆるやかに感じるのです。映画は静かに終わるのですが、登場した少女たちの物語はこれから、というところが、切なくなってきました。

この作品は、少女たちの世界を描いて見せながら、実は現代社会の歪みの中で暮らす、没個性な一般人そのものまでもとらえている点でも、とても興味深いものがあります。大人がこの少女たちの世界を、怖いと言っているようでは駄目、と言いたげな市川監督のニヤリとした顔が目に浮かんできそうになりました。

それにしても、成海漓子というかわいい女優さん、なかなかの大物ですよ。

この娘を見に行くだけでも、お金払って映画館に行く価値はあります。

|

« 映画「ロッキー・ザ・ファイナル」 | トップページ | ノックさんの貢献度 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 映画「あしたの私のつくり方」(少しネタバレ):

» イオンシネマの活用法 [イオンシネマ 新しいタイプの映画館]
全国に出店を続けるイオンシネマの活用法とそこから学ぶべきことを紹介しています。 [続きを読む]

受信: 2007年5月10日 (木) 13時08分

« 映画「ロッキー・ザ・ファイナル」 | トップページ | ノックさんの貢献度 »